あの唄はもう唄わないのですかの物語性のある歌詞に感動して…

 今回は私が風の楽曲の中で一番好きな曲である「あの唄はもう唄わないのですか」の曲の歌詞について考察していきたいと思います。この曲は1975年にリリースされた風のセカンドアルバムに収録されている楽曲で、その後風のセカンドアルバム『時は流れて…』に収録された楽曲です。しかし、伊勢正三さん曰く、この曲はアルバムに入れる予定はなかったそうですが、シングルとは別アレンジにして、収録したそうです。それではまず、「あの唄はもう唄わないのですか」の歌詞を全文見てみましょう。

 

今朝新聞の片隅に

ポツンと小さく出ていました

あなたのリサイタルの記事です

もう一年経ったのですね

 

去年もひとりで 誰にも知れずに

一番うしろで見てました

あの唄 もう一度聞きたくて

私のために作ってくれたと

今も信じてる あの唄を……

 

あなたと初めて出会ったのは

坂の途中の小さな店

あなたはいつも唄っていた

安いギターをいたわるように

 

いつかあなたのポケットにあった

あの店のマッチ箱ひとつ

今でも 時々とりだして

ひとつ つけてはすぐに消します 

あなたの香りがしないうちに

 

雨が降る日は 近くの駅まで

ひとつの傘の中 帰り道

そして二人で口ずさんだ

あの唄はもう唄わないのですか

私にとっては 思い出なのに

 

 この曲はミュージシャンの男性と付き合っていた女性の曲ですね。このミュージシャンのリサイタルの記事が新聞の片隅に小さく載っているのですから、ものすごく人気があるわけではないのかもしれませんが、新聞記事になるくらいには有名だったのでしょう。

 そしてこの新聞記事を見る一年前には、誰にも気づかれないように、つまり男性に気づかれないように一番後ろで見ていたと言っているのですから、この時にはすでにこの女性はミュージシャンの男性とは別れていたのでしょう。そして、この女性はこの時男性に会いたくてリサイタルに行ったのではなく、男性が自分のために作ってくれたと信じている曲を聴くために訪れてますね。つまり自分の思い出に会いに行ったのかもしれませんね。

  そして女性は「私のために作ってくれたと今も信じてるあの唄を」と言っているくらいなのですから、もしかするとこの曲は男性が女性に告白するときに唄った曲。あるいは、男性がこの女性と付き合い始めた後に作った、2人の思い出の曲なのかもしれませんね。私のためにと言っているくらいなのですから、男性が女性と出会ってから作った曲であるのは間違いありませんね。

 そしてこの女性が男性と初めてあったのは、坂の途中にある小さな店。この店は地域の人が通う隠れ家や的存在だったのかもしれませんね。男性のポケットにある日、この店のマッチ箱があったそうですから、この場所はスナックだったのかもしれませんね。マッチ箱がもらえる店は喫茶店、BAR、スナックなどが挙げられますが、その中で音楽の演奏などが行われるのは、スナックですね。喫茶店でもあるそうですが、やはり珍しいことだそうです。彼はいつも唄っていたそうですから、やはりスナックである可能性が高いと思います。

 そして、現在彼女は懐かしく思いこの店のマッチ箱の中のマッチに火をつけるんですね。マッチに火をつけても、彼の香りがしないうちに消してしまうんです。これはあの店に通い続けていた彼の香りと、マッチをつけることで蘇ってくる彼との思い出の2つをかけているのかもしえません。もしかしたらたばこの火もこのマッチでつけたりした、二人の思い出の品なのかもしれませんね。

 雨が降る日はこの店から近くの駅までひとつの傘で相合傘をしながら歩いたのですね。そしてその道で、私のために作ってくれたと信じているあの唄を唄ったのですね。そんな女性にとっては思い出の唄なのに男性は去年のリサイタルでは唄わなかったんですね。もしかしたら今年も唄わなかったのかもしれません。

 最後にマッチ(火)と雨(水)を出しているのは、前に進もうとする女性の希望の心と、彼のことをまだ忘れずにいる女性の悲しい心の2つを表しているのかもしれませんね。